Telefunken EBIII

前の記事がメリークリスマスですからもう3ヶ月。時の流れってほんとに早いですね。

よく見に行ってるドイツの方のブログがあるのですが、とても面白い記事がのってました。

ヨーロッパには2A3に近い特性のAD1という直熱三極管があります。耐圧・損失は2A3より高いのでお兄さんなのですが、推奨動作点が近いので互換で使えます。 ただフィラメント仕様とベースが違うので改造が必要になります。

AD1はかなりニッチな球ではありますが、日本ではご存知の方はたくさんいらっしゃると思います。アメリカの2A3の普及型はST管に独特な2つの膨らみを持たせたグラマー美人ですが、AD1はフラットプレートで見るからに繊細です。

アメリカでは1940年台に2A3が軍用に大量生産されたこともあり、外国球AD1はアメリカでは幻の球です。アメリカの真空管オタクでも名前も知らないという人は多いと思います。また2A3もAD1も60年以上前に生産された真空管ですが、AD1は2A3のようにソ連時代に共産圏で大量コピーされなかったのでこれから先アメリカで人気が出るというのもあまり無さそうです。

AD1は派生型がいろいろあるのですが、テレフンケンが作ったEBIIIというのがあります。この真空管はとても珍しく、Frankさんの真空管データサイトにも載ってないぐらいです。 そしてEBIIIは本国ドイツでも希少品らしく、上記のドイツの方のブログでも以前特集記事を書かれていたぐらいなのです。

ところが、このドイツの方が見つけてしまったのが日本の真空管アンプに載せられたEBIII。 ソースがどこか書いてないのですが、「アジアの人たちはなんてクレージーなんだ」とタイトルは大げさなのですが、実はそういうのを見つけて嬉しげな記事にしています。

2A3 Manic  (ドイツ語) 

タコ坊主の謎

コンパクトロン管 6C10

6C10という真空管があります。

コンパクトロンといってGT管を短くしたような形で, 内部に12AX7三本が内蔵されています。フェンダーのスーパーチャンプというギターアンプに使われましたが、実装密度が高くなるので真空管テレビや測定器等にも良く使われました。

コンパクトロンはベース部の部品が他の現行真空管から流用できず、新たに生産するほど需要がないと言う事もあり、現行生産品はありません。なので6C10は希少品です。 唯一数年前に閉鎖したセルビアのEi工場品で、ユーゴ戦争以前からのストックがNOSで出回っているだけです。

Ei 6C10

このユーゴ製 Ei 6C10ですが背の低いコンパクトロンの中でなぜか頭でっかちのタコ坊主でなかなか愛嬌があります。測定するとコンダクタンス値がかなり高く出ます。コンダクタンスは最低値以上は合格なので一応問題は無く、そしてスペックどおりの特性でないのはEi工場品にはよくあった話なのでまぁ、とりわけ不思議ではないですが、うーむ、なんかしっくりこないですね。

昔からEi品にはいろいろとありましたが、タコ坊主にもやはりなにかありそうです。

チャンプに装着して弾いてみると音はちゃんと出ます。面白い事に音色はおなじEiのECC83に似通っています。 また最近Ei 6C10を真空管オシロ修理のために買われた方がいてGE製6C10に比べると電極容量が若干高めだった意外は普通に動作したとの事です。

タコ坊主の謎

このタコ坊主くん、内部部品を見るとどうも他のEi品と異なるようです。どこかで生産された真空管にEiが自前のロゴをつけていた可能性は否定できませんが、なにしろEiは下請け中の下請けです。Ei品は他社へOEM供給されたり、ひどいのになると偽造の素にされた事はあっても、上位ブランドの真空管にわざわざEiロゴをつけて売ることはちょっと考えられないです。

何らかの理由で他社(米国GE?)から 部品の供給を受けてEiで組立された真空管だった可能性が大ですが、うーむ、さて一体どんないきさつがあったのでしょうか。

ところで6C10はこのEi品も、仕入れ値が数年前と比べ高騰してしまったのですが、近似管の6AC10は不人気でまだまだかなり安価です。 回路の変更次第で使えるのなら6AC10で代替するのも手ですね。

最近の真空管の動向

皆様いかが御過ごしでしょうか。ゴールデンウィークも終わってもうすぐ夏ですね。

真空管の使用・販売量ではやはりアメリカ、日本がダントツだと思いますが、真空管市場の状況は最近はどうなってるのでしょう。ちょっとまとめてみました。

ギターアンプの真空管主流は不変

真空管の一番の市場はギターアンプだというのはご存知の方も多いかと思いますが、ギターアンプはどのメーカーも中級から上級製品はほとんど真空管アンプで、これは変わりません。 最近はデジタル処理のモデリングアンプもありますが、いかに上手に真空管アンプを真似ているかがセールスポイントなのでかえって真空管アンプのイメージを高める事に繋がっているようです。また大手のギターアンプメーカー以外にアメリカはガレージメーカーもやたらと多いのですがほぼ100パーセント真空管アンプなのです。

種類の多様化

近年ムラード、タンソル、ゴールド・ライオンなどのブランドがリバイバルされ、主流真空管 の選択がとても豊富になりました。ロシア・中国製の真空管に自分のブランドをつけて販売するRuby, Tube Amp Doctor等のリブランド商社もそれぞれ細かく仕様を変えた真空管を独自に提供するようになりました。 またスロバキアのJJもかなり力を入れて新製品を開発しています。 当店は主流真空管は多品種を揃えるようにしていますが、12AX7や6L6はそれぞれ十数品種もの在庫になります。また、KT90やKT120など高パワー管も少しずつ増えてきました。安価な物から上級品種まで選択の幅が広く、使う側にはとても良い状況になってきました。

品質の安定

真空管は空気を抜くから真空管なのですが、作り手が気を抜くのは不良品につながります。真空管は手作りなので、評判の良いメーカーの真空管でも品質にはけっこう上下があり、良いロットと悪いロットがあります。私どもは外国・特に日本のお客様もけっこう多いので品質や不良にはとても気を使いますが、ロット全体に問題があると選別してもどうにもなりません。幸いな事にこの上下が最近かなり減りました。中でもゴールドライオン品はとても丁寧に作ってあり、高品質を継続して維持していますが、大手のアンプメーカーがOEM採用するソブテック、Sロゴスベトラーナやエレハモ品は品質管理がきちんとされているようです。

という事で、アメリカで真空管はまだまだ熱く続いているもようです。

Antique Airwaves

古い真空管ラジオ、特にアメリカ製のものに関してときどきお問い合わせを頂く事があります。 インターネットを探せば情報はあるんですが、見つけにくいし、古い情報は掲載がわかりにくかったり見にくかったり、と困ってしまう事がよくあります。

で、そんな中、アンティーク・エアウェーブ (www.AntiqueAirWaves.com) と言うサイトを見つけました。幾つか関連サイトを運営しているスティーブさんという方がやっておられるリンク集サイトで、アンティークラジオと測定器をテーマにしています。

このリンク集も良いのですが、アンティークラジオの回路図を販売するサイト(www.AntiqueRadioSchematics.orgwww.TheSchematicMan.com もやっておられて、こちらは膨大な種類のPDFをPaypalで購入できるようになってます。

アンティークラジオなどに興味があると、eBayでついつい落札し、ピカピカのが来たのは良いんだけどちゃんと動作せず、回路図がないのでそのまま押し入れにしまって忘れてた。なんて事はけっこうあるんじゃないかと思います(ちなみにウチはそんな事は一切全く…. あります)。 PDFの値段も手頃で便利なのも良いです。他にもアンティークカーラジオのサイトなんてあるのも楽しいですよね。

そうそう実はスティーブさんご自身のサイトを最初に見つけたのですが、コンテンツが多くてみていて飽きないです。とりわけ眼を惹いたのが彼の整然としたワークベンチのページでした。 てっきり元リペアマンかと思いましたがご本人よるとIT畑だったそうで、なかなか面白いです。

Quick Lookup 追加

サイトの更新が続いているのにお気づきの方もいらっしゃるかと思います。

Quick Lookup がついたカテゴリー

最新の機能は一部カテゴリーについた真空管の値段比較表です。 例えば6L6のカテゴリーを開けると下のように Quick Lookup という箱が出てきます。

このQuick Lookupをクリックすると、ペアやクォッドの価格表が出てくるのです。まぁ、このようなアコーディオン機能はインターネットでは今時珍しくもなんとも無いものですが。

でもこの10年ほど見慣れた、というかまぁかわり映えのしなかったサイトがちょっと進化していると、皆さん驚いてるのではないか、とちょっとほくそ笑んでいたります。

価格表です

この価格表は手で作るのではなく、実際の価格データを反映してくれるので手がかからなくて良いです。

一覧で見れるのは便利で、6L6や12AX7は知らない間にこんなに種類が増えてたんだ、と自分たちでもちょっとびっくりしました。これら以外にもリブランド品とかありますので現行真空管はいろいろ多様化が進んできたようです。

ただカテゴリーによっては価格表をどうしようか思案中でもあります。一番悩ましいのがパワー三極管のカテゴリーです。 見つけやすいように数種類をひとまとめにしてしまいましたので、これを価格順に並べるのはおかしいですよね。

パワー三極管は日本からのアクセスが一番多いページの一つで、この辺どう楽しんでもらえる作りにするか、いろいろと思案中です。

 

ツィートとサイトアップデート

日本もあちこち桜がまっさかりのようですね。 アメリカも地域によってはきれいな桜がありますが、日本の桜の風情はやはり日本でなければ味わえない物です。

さて最近ちょこちょことツィートしていますのでブログがちょっとご無沙汰になってしまいました。 ツィッターはメールみたいにあらたまらず、ちょっとしたやり取りには便利です。品物が届いた日本のお客さんにリアルタイムでご連絡をいただいたりするととても嬉しい物です。フォローをどうぞ。

さてお気づきかと思いますが、www.boiaudioworks.com サイトのデザインが更新になりました。これはほんとに長い間の懸案事項で、サーバー環境を整えたりしていましたので意外と長くかかってしまいました。 元のサイトデザインはずいぶん昔の物なので、内容はかなり刷新していますが、レイアウトや配色は以前と同じ路線です。 勝手を知ったレイアウトだけどモダンでクリーンに、といういわばリフォームを目的にしました。

更新はまだ継続中で、新しいコンテンツを増やす作業に入っています。 作業の都合で日本語版の更新が英語版に遅れる事もありますが、もし閲覧に不都合等ありましたら、ぜひご一方頂ければ幸いに存じます。