ケーブルで音は変わるのか

ケーブルで音が変わる、と言うのは昔から意見が分かれるトピックなのはご存知と思います。 

個人的な意見としてはちゃんとしてるケーブルを変えたからと言って大して変わるものではないと思ってます。

でも、変わるときはもう激変って言っちゃう、ってぐらい変わると思ってます。 

なんか矛盾したこと言ってますが、どういう事かというと実は変わって当然という場合があるのです。

フィルター効果

ケーブルは電流の行き帰り双方向が必要なので銅線が二本通ってます。この二本を離すと間を通るノイズを拾うアンテナになります。 これではまずいので、密着させたり、2本のうちグランド電位の銅線を網や箔状にしてもう一本の銅線をくるんでやります。 これがシールドケーブルです。

この構造は拾うノイズが減りますが、二本の銅線が絶縁体を挟むコンデンサーになってしまい、長ければ長いほど高域を減衰させてしまいます。 構造や長さの違うケーブルはコンデンサーとしての容量が違うので減衰量が変わって音が変わります。

送り出しインピーダンス

ケーブルのせいで減衰してしまう信号ですが、これは主に送り出し側のインピーダンスとケーブルの容量で特性が決まるRCもしくはLCのハイカットフィルターのせいです。

ギターのピックアップがこれの良い例で、かなり高インピーダンスな信号源な上にステージ上では長いケーブルを繋げないとなりません。 なのでケーブルで音がけっこう変わります。 

余談ですがギター側にFET一石でできるぐらいの簡単なバッファー回路をつければ少々長いケーブルを付けてもキラキラした音のままでいい感じになったりします。 電池が必要になるのでちょっと煩雑になってしまいますが。

半故障状態

で、ここまでは普通の物理の法則で説明がつきますが、ケーブルを変えると怪奇現象みたいに変わることがあります。 ほんとの激変事象があるのです。

種明かしをすると、これはビンテージアンプに特に多いのですが、ジャックやアースの接触不良などの場合です。ケーブルを変えるとジャックやアースの接触が変わるので音がえらく変わったりします。それだけでなく寄生発振が起きたりしてて、簡単な事ですがまともな状態にしてあげるだけで激変体験ができます。 

また一回ならずあったのが銅線が中で腐食・断線しかけている場合です。電源ケーブルでこれがあると電源電圧が落ちてたり上下してたりします。 ギターアンプでオリジナルが良いんだ、と電源ケーブルまで昔のままのアンプで、電源電圧が妙に低いな、とチェックしていくと電源ケーブルがほんわかあたたかくなってた、なんてのが一度ならずあります。 真空管アンプはフィラメント電力が必要なので、電源ケーブルを流れる電流も多く、不都合があった時の電圧降下もより多いです。

まともなのが一番

結局のところケーブルは問題を起こさず働いてくれるのが一番だと思います。 ギターのシールドケーブルもハイ落ちは音作りと考えて、乱暴に扱い続けても断線や接触不良をを起こさないような頑丈なケーブルが一番ではないでしょうか。 

また無用に長いケーブルも考えものです。 短くしすぎてジャックやプラグ内部に応力をかける事は避けるべきですが、必要な長さできちんとつなげれば、後は存在してもいないかのように音楽を楽しめる、というのがケーブルの本来の姿ではないでしょうか。

長寿

uTraceのキットが到着しました。箱開けから別ページに掲載していこうと思います。

ところでB-52・ストラトフォートレスという爆撃機があります。 1952年初飛行ですが、米空軍は2040年まで現役で使用する予定だそうです。

ということは退役する頃は初飛行以来88年近く経ってるってことですね。 実際は1952年から1962年の間に製造されたようですが、一番新しい機体でも80年近く使う事になります。

1952年というとトランジスタがまだ開発されていない頃で、軍用に耐える高信頼半導体が出てくるのはまだだいぶ後です。ということはこのB-52、無線からレーダーから航法装置まで全部真空管で飛ばしてたんですね。  

もちろんその後電子装備は何度も入れ替えられて中身は全く変わっているようですが、まだ真空管を使っている機体もあるという話も聞きます。 どの部分なのかはわからないのですが、もしかしたら改良の意味が無いような部分の電源などに使われているのでしょうか。 

そう言えばいまだに時々出回っているベースにシリコンを封入して耐震性を高めてある5R4WGB整流管はB-52用だという話も聞きます。

まぁ考えてみたら軍用で無い真空管アンプも部品の経年変化はあるものの修理は簡単だし、トランスさえまともなら相当長い年月使用できますね。 1950年代のツィードアンプは2040年にも現役で使われてそうで、B52も目じゃないって事かも。 

究極の差動

真空管アンプにかぎらずギターアンプを使うとけっこうノイズに悩まされまよね。 

アンプというより、ギターやベースのピックアップからノイズが乗るのですが、ピックアップは細い線を無数に巻いたコイルです。 弦の振動を電磁的に拾うために磁石が真ん中に入っていますがこのピックアップ、電磁ノイズを拾うためのアンテナとしてはかなり高性能です。 

コイルを2つ逆相につなぐとノイズは打ち消されます。 そのままだと弦の振動も打ち消されてしまうので磁石の極性も逆にしてやります。 するとノイズが消えて弦の信号だけが出てきます。 これがハムバッキング・ピックアップと呼ばれるものです。 

実際はノイズが乗っているのですが波形を逆にして足してやると打ち消されるわけです。アナログで引き算をしているわけですが、これは信号伝達でもよく使われる差動伝送と同じ原理です。 

そう言えばアンプの回路でも差動アンプがあります。産業用の電子回路ではごく普通に使われています。レコーディングスタジオなどでも機材は差動伝送がふつうです。 さらに最近は自作の真空管差動アンプ回路もよく見かけますね。

ってことはハムバッカーピックアップの音をスタジオで録音して、それを差動アンプで聞いたらなんと、入り口から出口まで究極の全段差動じゃないですか。 

なんてことをラリー・カールトンを聞きながらふっと考えたりしてます。