タコ坊主の謎

コンパクトロン管 6C10

6C10という真空管があります。

コンパクトロンといってGT管を短くしたような形で, 内部に12AX7三本が内蔵されています。フェンダーのスーパーチャンプというギターアンプに使われましたが、実装密度が高くなるので真空管テレビや測定器等にも良く使われました。

コンパクトロンはベース部の部品が他の現行真空管から流用できず、新たに生産するほど需要がないと言う事もあり、現行生産品はありません。なので6C10は希少品です。 唯一数年前に閉鎖したセルビアのEi工場品で、ユーゴ戦争以前からのストックがNOSで出回っているだけです。

Ei 6C10

このユーゴ製 Ei 6C10ですが背の低いコンパクトロンの中でなぜか頭でっかちのタコ坊主でなかなか愛嬌があります。測定するとコンダクタンス値がかなり高く出ます。コンダクタンスは最低値以上は合格なので一応問題は無く、そしてスペックどおりの特性でないのはEi工場品にはよくあった話なのでまぁ、とりわけ不思議ではないですが、うーむ、なんかしっくりこないですね。

昔からEi品にはいろいろとありましたが、タコ坊主にもやはりなにかありそうです。

チャンプに装着して弾いてみると音はちゃんと出ます。面白い事に音色はおなじEiのECC83に似通っています。 また最近Ei 6C10を真空管オシロ修理のために買われた方がいてGE製6C10に比べると電極容量が若干高めだった意外は普通に動作したとの事です。

タコ坊主の謎

このタコ坊主くん、内部部品を見るとどうも他のEi品と異なるようです。どこかで生産された真空管にEiが自前のロゴをつけていた可能性は否定できませんが、なにしろEiは下請け中の下請けです。Ei品は他社へOEM供給されたり、ひどいのになると偽造の素にされた事はあっても、上位ブランドの真空管にわざわざEiロゴをつけて売ることはちょっと考えられないです。

何らかの理由で他社(米国GE?)から 部品の供給を受けてEiで組立された真空管だった可能性が大ですが、うーむ、さて一体どんないきさつがあったのでしょうか。

ところで6C10はこのEi品も、仕入れ値が数年前と比べ高騰してしまったのですが、近似管の6AC10は不人気でまだまだかなり安価です。 回路の変更次第で使えるのなら6AC10で代替するのも手ですね。