12AX7と真空管試験機

冬たけなわですね。 サンディエゴはちょっとした異常気候で暖かく、真空管を扱っているスタッフが暑がって扇風機をかけるぐらいです。

写真は真空管テスターのメーターです。 真空管テスターは真空管の電極に所定の電圧をかけて性能をチェックするもので、私たちも数台使っています。

この真空管テスターは大きく分けて二通りあります。 まずエミッションテスターと呼ばれ、2極管動作をさせて最大電流を測るタイプ。 そして相互コンダクタンステスターと呼ばれ、実際に増幅動作をさせて信号を計るタイプです。

前者のエミッションテスターは真空管を2極管接続、つまりダイオードとして扱い、どれだけ最大電流が流れるかで良・不良を判断します。 もし流れるべき最大電流以下だったらエミッションが下がっていると言う事なのですが、これは最大電流値がこれぐらい、と言う前提があります。

昔、アメリカで真空管が製造販売されていた頃はこれでよかったのですが、数十年後の現在、現行品はロシアなどでコピーされた真空管がベースになっています。 これらの真空管はオリジナルのデッドコピーでなく、改良が重ねられているのですが、そのためエミッションテスターで正確に測れないものがあります。

特に例として現行品12AX7でマイクロフォニックスを低減するために内部構造を小型化したタイプは最大電流が数割低くなっています。 12AX7は最大電流よりずっと低い条件で使われるので、実用には全く問題がありません。 でも実際には使用されない領域の最大電流が低いためにエミッションテスターではカソードが劣化してなくても不良と出てしまうので、注意が必要です。

実際にカソードの劣化を計るには、フィラメント電圧を下げてコンダクタンスの変化を見るのが一番正確です。 元気なカソードはフィラメント電圧が下がってもコンダクタンスはあまり低下しません。 くたびれてエミ減になった真空管はフィラメント電圧が1割下がっただけでコンダクタンスが何割も減ります。

コンダクタンステスターにはたいていこのエミ減テスト(ライフテスト)機能が備わっており、私どもも真空管をテストする時に使っています。