マイクロフォニックス (1)

マイクロフォニックスって何でしょうか?

真空管はガラス管と金属片を組み合わせた物なので、共振します。共振するとごく微細ながら電極同士が近づいたり離れたりする訳です。これはマイクロフォンが振動を信号として拾うのと一緒です。

マイクロフォンにも種類があり、振動を磁気で拾うのがダイナミックマイク、電極間の容量変化を拾うのがコンデンサーマイクです。 真空管はカソードからプレートへ飛んでいく電子の流れをグリッドが振動する事で変調してしまうので、さしずめ電子マイクでしょうか。

真空管には共振する周波数が必ずあり、これは避けて通れない問題です。 この周波数は12AX7のようなミニチュア管だと500Hz−2KHzぐらいの周波数にある事が多く、問題になります。 ただ共振しやすさにはかなり差があります。(元?)無線少年の方にはQと言った方がわかりやすいかも知れませんが、このQ、共振しやすさは真空管の設計で違い、また個体差もかなりあります。

珍品

曙光製の2A3-Zという真空管があります。 何でも50周年記念で気合いを入れて作ったそうで黒ガラスに白ベースでユニークなルックスです。

12AX7BやEL34Bなど、今時の中国製真空管は品質もかなり高く、酷使されがちなギターアンプメーカーでもOEM採用している所もいくつかあります。 オーディオ用にも2A3, 300Bのローエンド品を生産していますが、近年はハイエンド指向の真空管も生産しています。 メッシュプレートを使ったりと工芸品のような作りの物まであります。

この2A3-Zは黒ガラスなので中は見えないのですがそのかわり、アメリカのネットオークションに出品されているのを見ると、ガラスに漢字で「珍品」とシルクスクリーンがしてあります

これは日本の方にはあまりウケないとは思うのですが、アメリカ人には逆に受け入れられるかも知れないですね。 日本アニメや、映画「Fast and Furious」の影響でアメリカ人の若年層は漢字を受け入れやすく、ロサンゼルスのような街をイタ車が疾走し始めるのも時間の問題だと思うぐらいですから。

ウチでもアメリカ国内向けに「音質最高」とか真空管にシルクスクリーンを掛けてみようかとか話しているのですが、どんなもんでしょう。

リニューアル

ご覧のように、雑記がまたちょっと変わりました。 ちっとも書かないのにリニューアルして、と言われてしまいそうです。

でも時々オーダーのコメントやメールで応援のメッセージを頂いており、この場を借りてお礼を申し上げたく存じます。 やっぱり読んで頂けるのは嬉しい事です。 アメリカと日本、太平洋をまたいでの交流は良いですよね。 なので実験的にコメントがつけられるようにしました。コメントはこちらでチェックしてから出るのでちょっと時間が掛かりますが、よかったら試してみてください。

という事で次のネタは前回に書いたKT120。 もう入ってきていて、いろんなアンプで試して見ているのですが、なかなかのものです。 かなりストレスを掛けてみたりしているのですが、まだ不良が出ていないので開けて中を見るチャンスがまだありません。

このKT120, 外から見るとかなりカソードが大きめのようです。大電流仕様のカソード電極は面積が大きいのですが、作りが悪いと一部分にエミッション(電流が)集中しやすく、そこから簡単に放電してしまいます。

6C33などはその良い例で、定格近い電流を流して試験するとかなりの確率でカソードからグリッドへ放電を起こすので、まず小電流をずっと流してカソードを活性化してやらないといけません。

その点、KT120は最初から定格いっぱいの電流を掛けたりしても問題なく、普通の真空管と変わらないようです。 次は写真を撮ってアップしたいと思います。

雑記スペシャル

前回のKT120ですが、5月ぐらいの入荷になりそうです。 普通のKT88と差し替えた音質も興味がありますが、大出力を活かした自作アンプの制作にも良さそうですね。 

さて、話は変わりますが、過去に雑記スペシャルとしてちょっとしたセールや掘り出し品を販売した事があるのを覚えていらっしゃる方もいると思います。 

今回、また雑記を書きはじめたという事もあり、今年の雑記スペシャル第一弾として現行の直熱三極管を出す事にしました。 内容は エレクトロ・ハーモニクス 300B-EH  と JJ の 2A3-40です。  

このストックは 実は動作に問題が無い外見上の問題、例えばロゴのプリントがきれいでなかったり、ガラスに細かい泡や表面上のキズがあったりしたものです。 とは言っても当方は出荷担当が外見を非常に気にするのので、他の通販だったら普通のお客さんに黙って出しちゃうレベルの物だと思います。 

これを値段もちょっとお安くしてあります。もちろん通常品と同じ保証付きです。外見があまり気にならない方ならお得なお買い物だと思います。

数に限りがありますので、お問い合わせの方に在庫リストをお送りさせていただきます。 ご希望の方はEメールにて (infoあっとboiaudioworks.com) までお問い合わせください。  

TungSol KT-120

とてつもなくお久しぶりです。 皆さんいかがお過ごしでしょうか?

 私どもは相変わらず忙しくしています。ご存知の方もおられると思いますが、なにしろ少数精鋭のチームなので 通常業務が忙しく、雑記も更新が滞って気がつくと驚くほど間が空いてしまってお恥ずかしい次第です。

という訳でまたまた再開なのですが、耳よりなニュースからです。

 アメリカでTungSolブランドを販売するNew Sensor社がKT120という真空管を発表しました。 この真空管、6550/KT88/KT90と同じカーブ特性なのですが、なんとプレート損失60Wという大出力管です。 大電流・高損失を実現するにはカソードを大きくしてあるようで、写真を見る限り外形はかなり大きいようです。

動作点が決まっている既存のアンプに使っても出力は変わりませんが、自作にはかなり面白いかもしれません。  またこの真空管を使った新しいアンプの出現も期待されます。

発表されたばかりなのでまだあまり数は無いと思いますが、手に入り次第、雑記でレポートしていきます。 

グロー放電

冬だと思っていたらいつの間にかもう春ですね。 みなさんいかがお過ごしでしょうか。

お問い合わせで真空管のグロー放電とはどういうことかというのがありました。

真空管の内部は、当然の事ですが真空状態になっています。 この真空を作り出すためには真空状態にしてガラス管を封じるわけですが、この際に電極ごと高周波加熱し、発生ガスも排出しながらガラスを溶解し封入します。

この加熱をするのはなぜかと言うと、真空中では固体表面からもガスが発生する(アウトガス)ので、加熱してできるだけガスが枯れた状態にするためです。 真空をひきながら内部を超強力電子レンジで加熱し、さらにガラスを加熱して真空管を封印するというかなりおおがかりな工程なのです。

真空中でのアウトガス汚染は宇宙へ飛ばす望遠鏡などでは問題になるので、衛星の部品でも同じように真空中で加熱を行うそうです。

この工程がかなり大掛かりな上に、内部の電極のロウ付けのさいに高さに違いがあるので、真空管の高さにはばらつきがどうしてもあります。

ただ見かけはばらつきがあっても動作には問題が無いのですが、何らかの理由で真空度を確保できず封印してしまうと動作に問題がでてしまいます。

パワー管の場合、ある程度のガスが内部にあると電極間でグロー放電を起こしてしまいます。 グロー放電は写真のような紫色の発光で、電位差がある金属の周りからでます。 ひどいときはグロー放電だけで電流がどんどん流れるようになります。

こういうグロー放電が起きるような真空管はもちろん不良品ですが、幸い現行品で最初からこのような問題が起きることはまずありません。 なのでお手元に届く真空管にこの問題があることはありません。

実は手元に手ごろな不良品がないのでこの写真も封入ガスでわざとグロー放電を起こす仕組みの0A2を撮影したものなのです。