自作3極管

下記の動画はだいぶ以前に見つけた後リンクをなくしちゃって探していた幻の動画です。知ってる方もおられると思いますが、フランスのアマチュア無線家の方が自分で3極管を造った工程を見事な動画にまとめられた物です。 また探し当てる事ができて再度感動しながら観てました。

Fabrication d’une lampe triode

この動画に出て来る工程は実際の工場と基本的に変わらないと思います。 工場では一度に数万本と製造される物なのでコストコントロールや歩留まり向上の為にいろいろな工夫があるのはもちろんですが。

それにしても内容はもとより、この動画で印象に残ったのが火を使う仕事でもなんでも全部素手でやってしまうことです。 これがホントの手作りですね。

臨場感

ステレオアンプで、臨場感があると言いますね。

アメリカにMad Menという大ヒットTV番組があります。 50年前のアメリカの広告代理店を舞台にした番組で、日本でも放映されているようです。 この番組は設定の1960年代当時にとても忠実で、セットや小物にいたるまで徹底して再現している事で知られますが、それが強調されず自然なので違和感がありません。 そのため映像に臨場感があります。

ベンチシートの大きな自動車、手動タイプライター、スライドプロジェクターで写真を投影して鑑賞し、誰でもどこででも煙草をくゆらしてた、そういう時代ですね。 この時代は業務用の音響機器、映画館のPAや教会のオルガンは真空管式で、家電ではなく「家具」だった家庭用ステレオ、テレビ、ラジオセットも大多数が真空管でした。

そう考えるとなんでもプラスチックでできている現代とはかなりの違いですが、この番組にはそれを感じさせずその場に入れるような雰囲気があります。 当時のアメリカン・オーディオを代表するハーマン・カードン、マッキントッシュ、フィッシャー、EICOなどの往年の銘アンプを今鳴らして名盤を聴いてみると、50年前当時の人々が聴いて感じた世界がそこにあります。 録音そのものにも臨場感がありますが、さらにまるで50年前の世界にも臨んでいるようです。

レトロ・モダン

昨今ITで流行のクラウドというのがあります。これが大変な発展を遂げて身近に利用できるようになりました。

当社はアメリカにありますが、外国からの注文がかなり多く、とりわけ日本とフランスが多いです。日本はまだしもなぜフランスの方達に好まれるのか、これは未だにミステリーなのですが、とにかくBOI AudioWorksのショップのアクセスもアメリカ国内と外国が半々ぐらいの比率です。

日本からアメリカへのアクセスはどうしても時間がかかります。ショップサイトも簡素にして速く表示するようにしているのですが、画像はそうはいきません。真空管は見ていて楽しいものですから画像は必要ですよね。 でもサイズが大きく数も多い真空管画像を日本からアクセスするとどうしても表示が遅くなります。

これが昨今のクラウド技術を使うと、BOI AudioWorksの真空管サイトはアメリカにあるのに、画像は日本国内のサーバーからダウンロードできてしまいます。 日本だけでなく、ヨーロッパやアジアのサーバーに画像を配置しておけるのです。これを先週末から稼働して、真空管ショップサイトの文章はアメリカから、画像は地域的にもっと近いサーバー(日本からアクセスしたら日本国内)から配信するようになりました。

世界中に画像データを配置しておけるなんて、このサイトでEコマースをはじめた当時は夢みたいな話が、いとも簡単、安価にできるようになりました。

でも2010年に最新クラウド技術を駆使して世界中に高速配信する中身が、1950年代の最先端テクノロジー、真空管の画像だというのが一番面白いかもしれませんね。

鳴りモノ

KT66はヒースキットやリークのオーディオアンプで使われていますが、ギターアンプではあまり使われません。

KT66はヒーター電流が多い事以外はギターアンプ定番出力管6L6の互換品と言って良く、歪むまでドライブすると結構イケテル音がでます。なのに、ギターアンプであまり使われない理由があります。

KT66は特定の周波数を出力する時に鳴るのがあるのです。 ステージで大出力で使っている分にはアンプ内の真空管が鳴ってても聞こえないのですが、練習するぐらいの音量だと真空管が鳴る音の方が大きかったりします。

これはKT66独特のガラス管と内部構造の共振の問題だと思います。オーディオアンプではまず鳴った事が無いのですが、特定の音を弾くとアンプが鳴るあれはミュージシャンには非常に気になる物です。  中国製KT66でよくありましたが、なんとオリジナルのGEC製KT66でも鳴くのがあります。

ただこの鳴り、今のところGold Lion KT66では起こった事がありません。 構造の違いがあるから当然と言えば当然ですが、KT66が鳴って困っているお客さんにはGold Lion KT66を試してもらっています。

マイクロフォニックス (3)

で、実際にマイクロフォニックスってどんなものでしょう。

消しゴム付きの鉛筆でごく軽く真空管をたたくとスピーカーからコツコツという音がするのが普通です。(かなりのパルス出力がでますので強く叩いたり、高価なスピーカーを繋いだアンプなどでしないでください。) これがコーンコーンと鳴ったり、そのままフィードバックを起こしてブーとサイレンのように鳴りだすのが問題のマイクロフォニックスです。 フォノアンプやギターアンプの初段にはこういった真空管は使えません。 同じ真空管を低ゲイン回路、バッファ用途で使う場合にはあまり問題はありませんが。

不幸にしてマイクロフォニックスが出てしまった場合、シリコン製のOリングを真空管に付けると効果がある場合があります。これは共振重量を増加させて共鳴を減らすという考えで、効く時は効きますが、効かない場合もあります。 最初からの対処としては選別する事が一番です。

真空管の構造によってもマイクロフォニックスが出やすいのがあります。一般的に12AX7のような真空管は内部のプレートボックスが大きいものほど共鳴しやすいです。 幸いギターアンプの使用が前提の現行12AX7品はある程度のマイクロフォニックス処理がしてあるのでそれほど気にする必要はありません。 でも気になるなら選別する事をお勧めします(当社には選別サービスがあります)。

アンプの自作などの場合、真空管自体への振動伝達を考慮するのも効果的です。 プロ用の真空管マイクプリ等、開けてみるとソケットをゴムで浮かせて取り付けたりといろいろなノウハウがあるようです。

マイクロフォニックス(2)

マイクロフォニックスはいつ問題になるかというと、真空管を高ゲインで使う場合です。

一番良くある例はフォノアンプ、そして高ゲインなギターアンプです。 ギターアンプで大音量でならしていると共鳴フィードバックを起こす事がよくありますが、もともとマイクロフォニックな真空管を高ゲインアンプで使うと同じ理由でフィードバックを起こしてしまいます。

逆に気にしなくていいのは低ゲインの回路または真空管を使う場合です。 クリーントーン命のギタリストの方々によく相談を受けるのですが、初段の12AX7の代わりに5751や12AU7を使うワザがあり、こういう場合はマイクロフォニックスは気にする必要がありません。 オリジナルのツィードチャンプなんて12AX7一本に6V6シングルエンドの低ゲイン回路で、マイクロフォニックスは問題になりません。それでも全開にすれば耳栓が必要なのですが。

一時期コンシューマー向けのシンセやマイクプリに真空管をのせるのが流行りましたが、これもマイクロフォニックスは問題になりません。 真空管をバッファとして使うラインステージやCDプレーヤーも同じです。 それからパワーアンプの初段やドライバー段もゲインは高くなく問題になりません。 ヘッドフォンアンプも同じく問題になりません。

こうしてみるとマイクロフォニックスが問題になる状況というのはフォノアンプ・高ゲインアンプなどの場合に限られて来る事がわかります。