タンソル7581

www.boiaudioworks.com のサイトは更新後、英語が多くなってしまってちょっと戸惑っておられるお客さんもいるかもしれません。 また日本語でみやすくなるようにしていきますのでいましばらく御待ちください。 サイトが英語っぽくなっちゃっても中の日本人スタッフは相変わらずで、日本向けの発送は検品から発送、全部日本人スタッフがやっております。ご質問の応対ももちろん日本語でいつでもどうぞ。

TungSol 7581 Tube

Tung-Sol 7581

ところで写真は半年ほど前に発表になったタンソル7581で、最近在庫に加えましたので幾つかポイントを書いてみたいと思います。

最高損失は30W

7581Aというとプレート損失35Wの高パワー管なのに対して、新タンソル7581は30Wです。 これは普通の6L6GCと同じで、実際に6L6GCをベースにしたようです。 オリジナルの7581も新設計ではなく6L6GCの細部に改良を加えたものなので6L6GC、特にSロゴスベトラーナ6L6GCをベースにしてたのでどうと言う事は無いのですが、なぜ30Wどまりにしたのでしょうか。

これは推察ですが、35W損失保証の真空管にすると高価になり当然売り上げは落ちます。しかし実際に6L6系の35W損失管が必要なアンプ(特にギターアンプ)はほとんどないので高価で売れない35W管を作る意義がありません。 ここは名より実を取ったという事のようです。

作りは他の6L6GCより高精度

プレートボックスやガラス管は同じリフレクター工場製の6L6と共通部品ですが、プレートボックスのコーティングが違い、別途に組み立てているようです。 またスベトラーナ6L6GCと違い、上下2枚あるマイカのうち、下のはスプリングではなくガラス管を絞り込んだ下部で固定するようになっています。 これは加工精度、特にステム高が均一でないとできないのでそれなりの品質管理を前提に作っているようです。上部のスクリーン放熱板の取り付け等も丁寧です。

価格はお安くなりそう

今は出初めと言う事もあって値段がこなれていませんが、もし数が出るようになればアメリカではそこそこお手頃な値段になると思います。ただ、これは売り上げ次第ですので、今はちょっと希望的観測もありますが、。

 

と言う訳でいろいろな意味で面白い新製品です。 マッキントッシュMC30でしばらく試聴してみましたが6L6らしいからっとした音です。

タンソルブランドは既に6L6系に6L6G, 5881, 6L6GC-STR がありましたが、この7581が加わってなんと4種類になります。 7581と付けたのは6L6GC-STRとちょっとかぶるせいかもしれませんが、このラインナップを見ると企画しているのはこれはもうかなり真空管オタクの人ですよね。

それもちょっと嬉しい話です。

Making Vacuum Tubes

すっかり寒くて関東地方では雪まで降ってしまってるようですが、いかがお過ごしでしょうか。

最近YouTubeでまたまた真空管製造の動画を発見しました。 チェコの真空管ガレージメーカーKR Audioがカナダの人気番組 「How it’s made」に出ていた物です。 これはかなりの感動もので、真空管に興味がある方は必見です。

ご存知とは思いますが、真空管は手作りなので高さがちょっと違ったりするのが普通です。

これは動画を見るとわかるのですが、ステムをつぶしたり、管を丸めて切り落としたり、また(動画に無いですが)MT管のベースに管を被せて溶着する工程はバーナーを使って手作業でこなす事になるからです。

逆に言うと、目分量で大体同じに揃えられているというのは驚異の職人芸でもあります。 動画にでている職人さんも相当なスキルの持ち主です。 そう思うと、真空管は一つ一つがカスタムのハンドメード品で、それぞれ個性があるものですね。

リンクは下記です。 ぜひご覧ください。

そうそう、BOI AudioWorksの日本人スタッフが日本語でツィッターもやっています。ご感想等ぜひ @BOIAudioJPまでツィートでどうぞ。

How It’s Made – vacuum tubes

HP6634B 修理

HP 6634B 0-100V 可変電源

先日かたづけしていたら見覚えのある箱がでてきました。 開けてみるとHP/Agilent 6634Bという可変電源が。 0−100V・1A出力、GP−IBインターフェースを内蔵し、全デジタル制御で内蔵ファンのスピードまでキーパッドから制御できてしまうというスグレモノです。

なぜほうってあったんだろう、と電源を入れてみて、思い出しました。 動作が安定しないので安く買ったのです。 セルフテストはOKでキーパッド入力に反応しますが、電圧と電流表示が不安定な上に過電流保護がついてしまいます。 内蔵ファンも速度が一定しません。

アジレントはもとはヒューレットパッカードの計測器部門が独立した会社で、HPの伝統を受け継いでサポート情報は豊富です。この電源もサービスマニュアルがアジレントのウェブサイトからダウンロードできます。

内部は基板が2枚

開けてみると内部はトランスと基板がたった2枚。 電圧チェックしていくと、内部の各DC電源電圧が異様に低いです。 アナログ回路の+/-15Vが低い。 ロジック電源も4Vぐらい。 出力用の電源も130Vあるはずが80Vしかでていません。 トレースしていくと電源トランスの二次交流電圧も低いです。

AC電圧切り替えジャンパー

プロテクトも掛かるし、どっかショートしてトランスに過負荷が掛かっているのだろうか。 おっかしいなぁ、とマニュアルのページを繰ると、この電源トランスは一次側のジャンパー配線でAC電源電圧を切り替えるようになっています。 これを確認すると、220VAC入力設定になっていました。 これをマニュアル通り、米国の120VAC仕様に設定して灯を入れたらあっけなく動きました。

AC電源電圧が半分にもなれば、表示が全くつかなかったりエラーコードが出たりと、動かないのが普通だと思います。 でもそこはHP・アジレント。 半分動いてしまうんですね。

幸運の572−3 (2)

幸運の572−3

SV811・572とも販売はスベトラーナブランドでしたが、ロシアのリャザン工場製です。 リャザン工場はもともと大出力送信管を生産していたのですが、高価な送信管は品質や使用状況管理のために製造番号がつけられるのが普通です。 そのためかSV572、SV811はすべて中にシリアルナンバーが手書きされています。

先月も日本、東南アジアと幾つかSV572−3のご注文があったのですが、通電試験中になんと写真のシリアルナンバー5723を見つけました。

シリアルナンバーがついている真空管そのものが珍しいですし、内部についているのでごまかせないですし、いろいろ考えても型番(SV572−3)と製造番号(5723)が一致する真空管というのはまずないと思います。

スタッフが、これはラッキーナンバーのSV572だと言い出し、幸運の真空管という事になってしまいました。 この幸運のSV572−3、無事にお客さんのところへ旅立って行きましたが、アンプで鳴らすと幸運を呼ぶっていうのはなかなか夢があって良いんではないでしょうか。

幸運の572−3 (1)

SV572-3 by BOI AudioWorks

1990年代にSV811, SV572といったオーディオ出力用に開発された大出力3極管が製造されていました。 中でもSV572は最終進化形と言ってよい大出力3極管です。

SV572は最大定格がプレート耐圧1000V、プレート電流210mA, プレート損失125Wととんでもない値です。  一番使いやすい低ミュー版のSV572-3データシートによるとA2級シングル、Ep=900V、Ip=100mA の動作点で 歪み率1.0%時で40Wもの出力がとれるとなっています。

外観はトリタンのフィラメントが明るく、またゲッター材がガラス管でなくプレートに塗布してあるので普通の真空管とはだいぶ違った独特の雰囲気です。 ガラス管も細身で小ぶりです。

このガラス管はSV572がストレートな筒状、そしてSV811はコーク・ボトル形状です。 この違いは単純に商品として違いを出すためだったようで、SV811シリーズにもストレート・ボトルのものがあります。

SV572−3はもう製造されていませんが、商社に在庫がまだあります。 それほど大量に売れる真空管ではないのですが、私どもがSV572−3を販売している数少ない販売店と言う事もあり、世界中から注文がくるようになりました。

このSV572−3で面白い話があったのですが、それはまた次回で。

Workbench

日本は暑いようですね。 こういう暑いときは真空管アンプをいじるのもけっこう大変です。

電子工作は最初は小さなスペースでやっているものですが、しょっちゅうやっていれば工作作業をするベンチを備えたくなってくるものです。 パソコン用の机で代用したりして作業スペースを確保するも、測定器や部品ケースがいつの間にか増え、気がつくと前より小さなスペースに縮こまって半田ごてを握っていたりします。

作業スペースが増えると物が増え、作業スペースはさらに小さくなるという、これはもうオームの法則と並ぶ、負のスペースの法則なのです。

この負のスペースの法則、実は世界中どこでも起きる現象のようです。オーストラリアから電子工作のビデオブログを発信されている方がいるのですが、彼はガレージに電子工作スペースを持っています。 これが手狭になったので自作で机を足しているのですが、場所がないので駐車する車の上に作っています。

新しいデスクはしっかりした一枚板でちゃんとオイルでフィニッシュもしており、さすがです。 でも前述の負のスペースの法則によるとこのデスクもすぐモノで一杯になり、ちょっと間違えば車の上に物が落ちてきそうです。
それにしてもガレージは暑そうなのですが、オーストラリアは季節が逆なので今はかえって涼しいのがうらやましいです。