カーブトレーサー

uTracerはカーブトレーサーなのですが、そもそもカーブトレーサーってどんなものなのでしょう。 カーブトレーサーはトランジスタ用もあるのですが、ここでは真空管用を考えてみます。

真空管の特性図

真空管のデータシートを見ると特性図が出ています。いろいろありますが、一番よく見るのは縦軸がプレート電流・横軸がプレート電圧のもので、異なるグリッド電圧での曲線がならべてあります。

真空管はイギリス英語でバルブと言いますが、まさしく配管を流れる水をコントロールするバルブのような働きをします。 水圧がプレート電圧で、流量がプレート電流と考えると、水圧を変えると流量が変わるのと同じです。 またバルブの開閉でこの水圧対流量の関係が変わります。 これを図にしたのが特性図です。

カーブトレーサーの動作

カーブトレーサーは真空管の特性を目に見えるように表示する測定器です。動作は特性図にならってプレート電圧を変化させ、プレート電流を測りブラウン管にXY表示します。 これを違うグリッド電圧で繰り返すとデータシートの特性図そのものになります。 真空管の特性が一目でわかるので特性を知りたいときはとても便利です。

カーブトレーサーの実際

原理は簡単なのですが、カーブトレーサーはプレート電圧を数ボルトから数百ボルトまで変化させます。 さらにブラウン管に表示させるためにはこれが連続しないとなりません。 またそれなりの電流も供給しないとならないわけで、いわば超ド級のノコギリ波発生装置なのです。さらにグリッド電圧をプレート電圧の掃引にあわせてステップで変化させたりと、真空管そのものが主役だった時代にこれだけの性能を出す仕組みを作るのは並大抵のことではありません。 実際に測定器として販売されたカーブトレーサーはトランジスタが主役になってからのシリコンデバイス用途がほとんどです。 トランジスタ用のカーブトレーサーで真空管も測れなくはないのですが、電圧や電流が足りなかったり、フィラメントとスクリーングリッド用の電源が必要になったり、といろいろ使用上の制約が出てきてしまいます。

テクトロニクス570

アメリカではテクトロニクス社が570真空管カーブトレーサーを販売していました。570は販売をはじめたのが1968年後期で、中は真空管だらけです。 マニュアルによると570はプレート電圧を700Vまで掛けられ、プレート電流も250mAも流せます。 当然のごとく内部には幾つものトランスがあり、大きい上にものすごく重く、世の中がトランジスタ主流になると必然と見向きもされず消えていってしまいました。 今でも忘れた頃にオークションサイトに出てきますがあまりの重さに誰も手を出そうとしないようです。

カーブトレーサーの実用性

真空管の特性が一目で見てとれるカーブトレーサーですが、コンダクタンステスターなどと比べるとどうなのでしょうか。 真空管テスターは真空管が実用条件の下で動作するかを測ります。 タイプによりますが、真空管の特性図の中で使いやすい範囲というのは大体決まっており、そこを通るロードラインにそった設計になります。 なので、実用で使う範囲の動作をメーターで読んで数字で出せるようになっています。 570のようなカーブトレーサーは素子としての真空管の特性を観察するのには優れていますが、コンダクタンス計測などは手軽にはできないので実用的ではありません。

現代のカーブトレーサー

最近はAD・DA変換やデジタル入出力を内蔵したワンチップマイクロコントローラーが出回っていて、グリッド電圧をステップ変化させながらプレート電圧をスィープしながらカソード電流を読み取る、などということは数十行のコードでできてしまいます。 デジタルなので読み取ったデータからコンダクタンスやミューを計算するのも難しくはありません。 それなのにカーブトレーサーがいっぱい出回ってないのは、高圧電源がネックになるからです。 どうやってマイクロコントローラーの電源電圧の100倍のプレート電圧を制御するか、そしていずれ出てくる真空管の不良によるショートや内部放電にどう対処するかというのが課題になります。

ただカーブトレーサーにしても実用にするにはそれなりのノウハウが必要です。 実は私達も中古のプログラマブル電源や測定器を使いGPIB制御のカーブトレーサーモドキを作ってみたことがありますが、例えば温度によって特性が変わるのでちまちまと高損失な動作点を測定していると特性カーブに変な曲線がついたり、といろいろな問題がありました。

結局のところ、真空管の試験・選別はカーブトレーサーでやるメリットはそれほどなく、専用の試験機が一番いいようです。

でも今回uTracerの回路をみていたらこういった問題点をいろいろ考えてあるようで、検証してみるのも面白そうです。