同じタイプの真空管をいくつか聞き比べする事をTube rolling と言います。
たとえば同じ12AX7でもメーカーや製造時期によって意外と音が違うもので、これが結構おもしろいものなのです。 オーディオもそうですがギターアンプは特に音の違いが顕著で、問い合わせはよくあります。 なので、私達も門外不出の聞き比べ専用真空管コレクションを持っているぐらいです。
ところでこのチューブ・ローリングをくりかえしていると、真空管を何度も抜き差しするわけですが、これには気を付けないといけない点があります。
比較的新しいソケットは真空管を抜くときに力が必要なので、真空管を揺らすように斜めにする事をくりかえして抜いてしまいがちです。 これが後の問題につながります。
ソケットによってはこれでパワー管のセンターピンを簡単に折ってしまいますが、それより大きな問題はソケット内の接触金具を広げてしまうことです。これで抜き差しは楽になりますが今度は接触不良の可能性が出てきます。
プリ管で真空管を触るとバリバリ・ザーと言う雑音が出てきたりとまったりするのはこのソケットの接触不良です。 パワー管でも雑音がでるほかグリッドが接触不良を起こすと熱暴走につながります。
今使っている真空管で問題が無くとも、真空管のピン径にも違いがありますので、真空管を変えてみたらノイズが出てくるようになったと言うこともあります。ソケット内の金具はある程度動くようになっているので配線のハンダに応力が繰り返しかかり、イモハンダみたいにボロボロになった例を見たこともあります。
このように真空管の抜き方しだいでいろいろな問題につながるのですが、これを避けるには抜く時に注意するしかありません。
と言っても大した事はなく、頭を持って揺らしながら抜くことはせず、根元を持ってまっすぐに少しずつ抜くようにするだけです。 私どものエージング機材やテスターは年に数千本の真空管を抜き差ししますが、抜き方に気をつけているだけでソケットの金具が緩んでしまうようなことはありません。
他にもNOS真空管やビンテージアンプなどでソケットやピンの汚れから接触不良を起こす事があります。緩んだソケットと相乗効果で特に問題がおきやすいものです。 これは接点洗浄が必要ですがスプレー式はそこら中にかかってしまうので避けた方が賢明です。
古いNOS品の場合、私どもは写真のような接点洗浄ペンを真空管のピンに必要最低限つけ、完全にふき取ってからテストするようにしています。 ソケットが緩んでいなければ接触不良による雑音や動作不安定などの問題がこれでなくなります。