幸運の572−3 (2)

幸運の572−3

SV811・572とも販売はスベトラーナブランドでしたが、ロシアのリャザン工場製です。 リャザン工場はもともと大出力送信管を生産していたのですが、高価な送信管は品質や使用状況管理のために製造番号がつけられるのが普通です。 そのためかSV572、SV811はすべて中にシリアルナンバーが手書きされています。

先月も日本、東南アジアと幾つかSV572−3のご注文があったのですが、通電試験中になんと写真のシリアルナンバー5723を見つけました。

シリアルナンバーがついている真空管そのものが珍しいですし、内部についているのでごまかせないですし、いろいろ考えても型番(SV572−3)と製造番号(5723)が一致する真空管というのはまずないと思います。

スタッフが、これはラッキーナンバーのSV572だと言い出し、幸運の真空管という事になってしまいました。 この幸運のSV572−3、無事にお客さんのところへ旅立って行きましたが、アンプで鳴らすと幸運を呼ぶっていうのはなかなか夢があって良いんではないでしょうか。

幸運の572−3 (1)

SV572-3 by BOI AudioWorks

1990年代にSV811, SV572といったオーディオ出力用に開発された大出力3極管が製造されていました。 中でもSV572は最終進化形と言ってよい大出力3極管です。

SV572は最大定格がプレート耐圧1000V、プレート電流210mA, プレート損失125Wととんでもない値です。  一番使いやすい低ミュー版のSV572-3データシートによるとA2級シングル、Ep=900V、Ip=100mA の動作点で 歪み率1.0%時で40Wもの出力がとれるとなっています。

外観はトリタンのフィラメントが明るく、またゲッター材がガラス管でなくプレートに塗布してあるので普通の真空管とはだいぶ違った独特の雰囲気です。 ガラス管も細身で小ぶりです。

このガラス管はSV572がストレートな筒状、そしてSV811はコーク・ボトル形状です。 この違いは単純に商品として違いを出すためだったようで、SV811シリーズにもストレート・ボトルのものがあります。

SV572−3はもう製造されていませんが、商社に在庫がまだあります。 それほど大量に売れる真空管ではないのですが、私どもがSV572−3を販売している数少ない販売店と言う事もあり、世界中から注文がくるようになりました。

このSV572−3で面白い話があったのですが、それはまた次回で。

Workbench

日本は暑いようですね。 こういう暑いときは真空管アンプをいじるのもけっこう大変です。

電子工作は最初は小さなスペースでやっているものですが、しょっちゅうやっていれば工作作業をするベンチを備えたくなってくるものです。 パソコン用の机で代用したりして作業スペースを確保するも、測定器や部品ケースがいつの間にか増え、気がつくと前より小さなスペースに縮こまって半田ごてを握っていたりします。

作業スペースが増えると物が増え、作業スペースはさらに小さくなるという、これはもうオームの法則と並ぶ、負のスペースの法則なのです。

この負のスペースの法則、実は世界中どこでも起きる現象のようです。オーストラリアから電子工作のビデオブログを発信されている方がいるのですが、彼はガレージに電子工作スペースを持っています。 これが手狭になったので自作で机を足しているのですが、場所がないので駐車する車の上に作っています。

新しいデスクはしっかりした一枚板でちゃんとオイルでフィニッシュもしており、さすがです。 でも前述の負のスペースの法則によるとこのデスクもすぐモノで一杯になり、ちょっと間違えば車の上に物が落ちてきそうです。
それにしてもガレージは暑そうなのですが、オーストラリアは季節が逆なので今はかえって涼しいのがうらやましいです。