真空管の雑音の違い

ノイズフロア

小型管からでるノイズもいろいろあります。 マイクロフォニックスといわれる振動系の雑音と、「サー」とでる信号系のノイズがあります。

あ、あと、ギターアンプの歪ませた音は人によっては雑音ととるようです。まぁあれはわざとですから別としましょう。

信号系のノイズレベルはかなり個体差があります。 写真は6N23Pという6DJ8互換の真空管のノイズを計測しているものです。 薄いのと明るいのとグラフが2つあり、薄いグラフは比較用で6922EHを低ノイズ選別したものです。

6N23Pはノイズが低いものはとても低いのですが、高いものもけっこうあります。この写真は中でも高く検査で落とされたものですが、ノイズが低い周波数に集中して盛り上がっています。

この雑音は聴くと「ゴー」とか「ザー」という音です。 そこそこ降っている雨音を屋内で聞く、あの感じです。 ノイズが高いと台風レベルになります。 バチッ、ゴゴゴとか他の音も混ざるし、雨音の強弱もあり台風接近中!の臨場感があります。 これは検査不良ですので出荷できません。

この雑音特性、生産工場によって特徴があり、この低域持ち上がりはヴォシュコード工場製によく見られます。 もっともこのままエージングを続けると高域のノイズもあがって来て偏りがなくなったりします。 通常ノイズが高い6DJ8/6922は最初から低域だけでなく高域もまんべんなく持ちあがったホワイトノイズが多いのですが。

この手のノイズはごく微量のガスが残っている事が原因なのですが、工場ごとに工程や材料が違うため、残るガスが違うということでしょうか。 これはゲッタで吸収されるものなのでノイズは減って行くはずなのですが、そこは真空管の不思議さで、反抗してノイズが増えたりするのもいます。

円高

8月はどうせ暇だし今年の雑記の月間更新記録を作る!と意気込んでいたのですが、ドル安のおかげでかえって忙しくなっています。 それでも記録更新中です。

面白い事に今回のドル安は日本だけでなく、ユーロ通貨圏やスイスなど為替レートが有利な地域から注文や問い合わせが増えています。 インターネットを通してビジネスをしていると世界経済が実感できてしまうのです。

どういう事かというと新聞の経済面に載るような米国債の格付けがなんたら、と雲をつかむような遠い世界の出来事があります。 これが株の乱高下になり、まわり回って為替レートに反映し、それで個人輸入される真空管の注文が上下するのです。

「風が吹いて桶屋が儲かる」ってほんっとに起きるんだねぇ、といたく感心してしまいます。 本来はビジネスチャンス到来!のこの状況で呑気な事言っててはいけないのかもしれません。が、どうやら私どもはちょっと商人感覚に乏しいようです。

とはあれ、この円高です。 真空管やパーツを個人輸入される方はこのチャンスを活かさない手はありません。 まとまった額の商品を今、ここのタイミングで購入したい、という方も多いと思います。 このタイミングですが、当店はご注文の商品の在庫を切らしている場合、月に数回ある入荷をお待ちいただいてからカードの決済をしています。

これはお客さんの注文の品が揃ってから決済するようにしているのですが、これだと逆に在庫が無いと円高のウマいタイミングを逃してしまう可能性があります。 なのでご希望なら在庫を切らしていてもとりあえずカード決済をすます事もできます。入荷待ちでもいから今このタイミングで決済しちゃって!とご希望でしたらご注文の際、コメント欄もしくはEメールにてお知らせください。

真空管交換 3つのポイント

真空管を交換するのは簡単です。アンプによってはけっこう出音が変わるので違う真空管に交換してみるのは楽しいものです。

今回は交換にあたってのポイントをまとめてみました。

正しい真空管と交換する

真空管は違う型番でも使えちゃう事が多いのですが、ケースバイケースなので知識が必要です。 逆に同じ系統でも、例えば6L6系の真空管は改良型が多く型番はそっくりなのに小は大を兼ねない場合もあります。

真空管の型番はアンプのマニュアルに従うか、アンプにすでに装着されている真空管と同じ型番の真空管を注文する。それでも?な時は、真空管オタクがいそうな販売店(当店の事です)に確認すると確実です。

真空管の交換は冷えてから優しく

真空管はとても熱くなるのでじゅうぶん冷えてから抜くようにします。 火傷防止だけでなく、熱い真空管をテーブルの表面などに置くと温度差で割れてしまうからです。

またオクタルベースのパワー管は、少しずつ引き抜くようにします。 前後左右に大きく傾けながら抜くとベースのガイドピンを折ってしまいます。 真空管は十分に冷えてからゆっくり抜くようにしてください。

パワー管交換後は見て確認する

パワー管を換え必要に応じてバイアス調整をしたあとしばらくは通電して真空管が赤熱しない事を確認します。

なんらかの理由で真空管がまともに動作していない場合、過熱してしまう事があります。過熱すると他の部品も痛めてしまいますのではじめはこれが無い事を見張るのです。 しばらくおいてほんわりとフィラメントの光がこぼれてる状態のままならばっちりです。

以上、できるだけ簡単にまとめてみましたが、質問やコメントがあればいつでもご連絡ください。

なおパワー管ではガラスに青色の蛍光色が出る事がありますがこの有無は良否と無関係です。この蛍光は個体により強くでたり出なかったりしますがその真空管の個性だと思ってあげてください。

聴覚検査

聴覚検査サンプル

知り合いのレコーディングエンジニアが言っていたのですが、人間左右の聴覚には意外と差があるものだそうです。

生まれつきの違いもあるかもしれないけど、大音量を聴き続けると聴覚にはかならず影響がでるものです。

大音量にさらされ続けて難聴になったミュージシャンというのはけっこういます。 また普通の人でもヘッドホンで大音量を聴くのは良く見かけます。

日常生活でも知らないうちに大音量にさらされているものです。 かのレコーディングエンジニアは高速で車の窓を開けて運転を重ねると左耳(アメリカは左ハンドル)の聴覚に影響がでると言って車の窓は開けません。

私のようなふつうの人間はそこまで神経質になる必要はないかと思いますが、オーディオを楽しむには自分の聴覚もサウンドシステムの一部なので、大切にするべきと思います。

聴覚は変化がわかりにくいもののようで、客観的に判定するには聴覚検査が必要です。 本格的には耳鼻科に行かないとならないようですが、簡易検査用のiPhoneアプリを見つけました。

簡易だけあってヘッドホンの特性や周囲の騒音レベルなどにかなり左右され、計る度にかなり違いますのであまり精度は無さそうです。 でもやってみるとなかなか興味深いです。

コンデンサーによる音の違い

コンデンサーは使われている誘電体や構造によって、特性が違います。 このコンデンサーの特性というのは曲者で、誘電体や構造のせいで寄生インダクタンスによる周波数特性、等価直列抵抗(ESR)に違いがあり、同じキャパシタンスのコンデンサーでもタイプによって回路の動作がちょっぴりですが変わってきます。 また掛かる電圧による容量の変化という非線形特性があり、これも使われている誘電体によって違います。

まぁ、難しい事はおいといて、コンデンサーにはもろもろの非線形な特性があり、タイプが違えば特性の違いが音にでると言う事です。

その違いを録音しようと思っても結構難しい物ですがこれをギターでやってみている人がいました。 エレキギターは磁石に細い電線を巻いたピックアップが弦の振動を拾って電気信号にしています。 この信号がボリュームとトーン回路を通してジャックに出てきます。 このギター内部の信号経路に使われているコンデンサーを換えて比較しています。

で、聴いてみるとまぁ音の違いが出ているようです。 まぁ、ギターは弾き方次第で相当音が変わりますし、コンデンサーのキャパシタンスを計っていないので、特に古い部品の経年変化などによる容量の差もあるかとは思います。 なので、参考程度に違いがわかるか聴いてみるのは面白いかもしれません。

HP6634B 修理

HP 6634B 0-100V 可変電源

先日かたづけしていたら見覚えのある箱がでてきました。 開けてみるとHP/Agilent 6634Bという可変電源が。 0−100V・1A出力、GP−IBインターフェースを内蔵し、全デジタル制御で内蔵ファンのスピードまでキーパッドから制御できてしまうというスグレモノです。

なぜほうってあったんだろう、と電源を入れてみて、思い出しました。 動作が安定しないので安く買ったのです。 セルフテストはOKでキーパッド入力に反応しますが、電圧と電流表示が不安定な上に過電流保護がついてしまいます。 内蔵ファンも速度が一定しません。

アジレントはもとはヒューレットパッカードの計測器部門が独立した会社で、HPの伝統を受け継いでサポート情報は豊富です。この電源もサービスマニュアルがアジレントのウェブサイトからダウンロードできます。

内部は基板が2枚

開けてみると内部はトランスと基板がたった2枚。 電圧チェックしていくと、内部の各DC電源電圧が異様に低いです。 アナログ回路の+/-15Vが低い。 ロジック電源も4Vぐらい。 出力用の電源も130Vあるはずが80Vしかでていません。 トレースしていくと電源トランスの二次交流電圧も低いです。

AC電圧切り替えジャンパー

プロテクトも掛かるし、どっかショートしてトランスに過負荷が掛かっているのだろうか。 おっかしいなぁ、とマニュアルのページを繰ると、この電源トランスは一次側のジャンパー配線でAC電源電圧を切り替えるようになっています。 これを確認すると、220VAC入力設定になっていました。 これをマニュアル通り、米国の120VAC仕様に設定して灯を入れたらあっけなく動きました。

AC電源電圧が半分にもなれば、表示が全くつかなかったりエラーコードが出たりと、動かないのが普通だと思います。 でもそこはHP・アジレント。 半分動いてしまうんですね。