フィラメントの明るさ

6L6GCのような真空管は捩られたフィラメントが絶縁スリーブの中に入れられています。なので通常は外からフィラメントが見えません。
6L6GC Filament

でも手作業で組み立てられる真空管は製造上のばらつきでフィラメントがスリーブの端からちょっとのぞいている事がまれにあります。もちろん動作には問題ありませんが、はみ出た部分のフィラメントは本来の役目のカソードの加熱をしないので無駄な部分です。

写真は6L6GCで、フィラメントが3ミリほどのぞいています。 二つあるように見えますが右側は放熱フィンに写った反射像です。

ナス管や特にトリウムタングステンをフィラメントに使った真空管はフィラメントが光って明るくなかなか雰囲気が良い物です。 これが普通のGT管やMT管は見えないのが普通ですが、フィラメント本体は写真のようにかなり明るいので、私たちも実はこの方が好みだったりします。

フィラメントがのぞいている真空管だけでペアを組んでみたらけっこう明るくていいかもしれないですね。でもこのように光る真空管はあまり無いので、気長に待たないといけないようですが。

6CA7EH改

パワー管のEL34はマーシャルやLeakに使われて、とてもポピュラーなパワー管です。

EL34はヨーロッパの型番で、アメリカでの型番は6CA7と言います。 ECC83が12AX7なのと同じですね。 なので昔、ヨーロッパ製のムラードやテレフンケンのEL34に6CA7の型番が付けられて売られてました。

6CA7は実は2種類あります。 上記のようにヨーロッパ製EL34が6CA7として売られていたのとは別に、アメリカで独自開発された6CA7があり、こちらは内部の構造が違い音も違うのです。

現行品の6CA7にはエレクトロ・ハーモニクスの6CA7EHとJJ 6CA7がありますが、両方ともオリジナルのシルバニア製6CA7を手本に設計されたもので、EL34とはまたちがった出音になります。

改良された6CA7EH6CA7EHは長期間製造されてきており、なかなか丈夫で良い真空管です。 これがいつの間にか改良されて放熱フィンが足されていました。 ちょっと見にくいですが、写真左側の6CA7EHには放熱フィンがついています。 

レシプロ戦闘機の「紫電」を改良した「紫電改」というのがありましたが、こちらは6CA7EH改です。

6CA7EHは同じバイアス電圧でより多いプレート電流が流れる傾向があり、普通のEL34と同じバイアス電流にするにはバイアス電圧をちょっと深くしてやらないとなりません。 この辺があまりポピュラーなでない理由かもしれませんが、もともとEL34より頑丈でさらにフィン付きになって頼もしくなりました。バイアスを調整して使いこなすとEL34とはまたちがった味わいの音が楽しめます。

フランケン・ペア

パワー管を相当数テストしていると、極端に動作点がずれた真空管というのがあります。

どういう事かというと、バイアスを極端に浅く(低く)、もしくは深くしないと所定のプレート電流にならないものです。

当店では出荷したパワー管のデータを全部残してあり、ブランド・型ごとの特性の分布を把握するようにしてますが、この分布の山の一番端っこのさらにその端っこの番外地に生息する真空管たちです。

エミッションもカットオフも問題なく、不良ではないのですが、固定バイアスのアンプでバイアスを目標値に追い込めない場合がありますので、極端に動作点がずれた真空管は返品してしまいます。

この分布のカーブを見てみると違う型の真空管、例えば6550の低いやつとEL34の高いやつとがバイアスが同じになっています。 静状態でバイアス電圧が一緒でもいったん信号が入ると動作は大きく違うのですが、それでも6550・EL34のフランケンシュタイン・ペアができる事になります。

実際にその組み合わせを売っている人がいたので、自分たちもメーカーへの返品の中から選んで6550・EL34のフランケン・ペアをギターアンプで試してみた事があります。

確かにバイアスは合わせられます。音も意外とふつうに出ちゃいます。 しかし良い音かというとそうでもないし、偏差が大きい真空管を組み合わせても再現性は無いです。 それに使っていてなんとも気分が良くありません。

結局、どうせやるならわざとイビツなフランケンアンプを作ってそれに使うセットが一つあれば十分だね、という結論になりました。

まだまだ先の事ですがハロウィンに良いかも。