長寿

uTraceのキットが到着しました。箱開けから別ページに掲載していこうと思います。

ところでB-52・ストラトフォートレスという爆撃機があります。 1952年初飛行ですが、米空軍は2040年まで現役で使用する予定だそうです。

ということは退役する頃は初飛行以来88年近く経ってるってことですね。 実際は1952年から1962年の間に製造されたようですが、一番新しい機体でも80年近く使う事になります。

1952年というとトランジスタがまだ開発されていない頃で、軍用に耐える高信頼半導体が出てくるのはまだだいぶ後です。ということはこのB-52、無線からレーダーから航法装置まで全部真空管で飛ばしてたんですね。  

もちろんその後電子装備は何度も入れ替えられて中身は全く変わっているようですが、まだ真空管を使っている機体もあるという話も聞きます。 どの部分なのかはわからないのですが、もしかしたら改良の意味が無いような部分の電源などに使われているのでしょうか。 

そう言えばいまだに時々出回っているベースにシリコンを封入して耐震性を高めてある5R4WGB整流管はB-52用だという話も聞きます。

まぁ考えてみたら軍用で無い真空管アンプも部品の経年変化はあるものの修理は簡単だし、トランスさえまともなら相当長い年月使用できますね。 1950年代のツィードアンプは2040年にも現役で使われてそうで、B52も目じゃないって事かも。 

究極の差動

真空管アンプにかぎらずギターアンプを使うとけっこうノイズに悩まされまよね。 

アンプというより、ギターやベースのピックアップからノイズが乗るのですが、ピックアップは細い線を無数に巻いたコイルです。 弦の振動を電磁的に拾うために磁石が真ん中に入っていますがこのピックアップ、電磁ノイズを拾うためのアンテナとしてはかなり高性能です。 

コイルを2つ逆相につなぐとノイズは打ち消されます。 そのままだと弦の振動も打ち消されてしまうので磁石の極性も逆にしてやります。 するとノイズが消えて弦の信号だけが出てきます。 これがハムバッキング・ピックアップと呼ばれるものです。 

実際はノイズが乗っているのですが波形を逆にして足してやると打ち消されるわけです。アナログで引き算をしているわけですが、これは信号伝達でもよく使われる差動伝送と同じ原理です。 

そう言えばアンプの回路でも差動アンプがあります。産業用の電子回路ではごく普通に使われています。レコーディングスタジオなどでも機材は差動伝送がふつうです。 さらに最近は自作の真空管差動アンプ回路もよく見かけますね。

ってことはハムバッカーピックアップの音をスタジオで録音して、それを差動アンプで聞いたらなんと、入り口から出口まで究極の全段差動じゃないですか。 

なんてことをラリー・カールトンを聞きながらふっと考えたりしてます。

DAコンバーター

DAコンバーターはデジタルデータをアナログ信号に変換する機材です。

デジタルデータそのものはビット数とサンプリング周波数で決まる数字の羅列ですが、数字で表せるところがクセモノで、ついついとらわれがちになります。

数字が高ければ原理的に優れていてすなわち音がいい、と印象付けるのは、まぁオーディオの世界では昔からあるマーケティング、とわかってはいるのですが…  ついつい引きこまれてしまいますよね。 その辺もオーディオの楽しみでもあるのですが。

そんなデジタル音源にからむいろいろな誤解を一掃してくれる動画がありました。 英語ですが、量子化、ナイキスト周波数、ディザーなどデジタル音源特有の話題を実際にオシロとスペアナで波形と帯域特性をみながら、また実際にノイズや高調波を増幅して聞いて説明してくれてとても参考になります。

まぁこの動画を見るとそこそこのDACなら出てくる音は十二分、という事になります。 ただこれは原理上は、ということで、実際の機材としてのDACの良し悪しは電源や出力段のアナログ回路でけっこう左右されるということも考えに入れて良いと思います。 

ハンダゴテ

uTracerは入金確認ののち発送されたそうです。 オランダから送料の安い便で送ってくるようなのでアメリカには1,2週後に届くのではないでしょうか。

ところでふと気がついたのですがハンダゴテって面白い言葉ですね。 「はんだこて」と発音する方もいるようですが、自分は「はんだごて」と発音します。 「ハンダゴテ」の方が正しいのではと思いますが、「はんだこて」の方が響きが良いです。

この「鏝」という名称も「半田鏝」以外で聞かないですよね。 自分はてっきりハンダゴテやアイロンのように熱を加える道具を鏝というのだと思っていました。ところが、ウィキペディアをみたら「手で持って使用する先がとがった道具の総称」だそうで、左官屋さんが使うあれも鏝なんですね。というか左官屋さんの道具が本家の鏝なのでしょうね。

ちなみに鏝に相当する英単語は無くて、左官ごてとハンダごての鏝たちはTrowelとIronと違う名称になります。「ハンダ」という言葉も外国語由来ではないようです。

なので「半田鏝」というのは純日本式の名称なんですね。電子回路や電子工作というとカタカナ語だらけのように思いますが、意外と日本語が生きている世界のようです。

カーブトレーサーとは

uTracer顛末記ですが、発注してキットが来るのを待っている状態です。

そもそもカーブトレーサーってなんでしょう、というお問い合わせがあったので、カーブトレーサーの記事を追加しました。

記事に出てくるテクトロニクスのカーブトレーサーですが、昔テクトロニクス本社でベアチップの状態のトランジスタの試作品をカーブトレーサーで評価しているのを見たことがあります。 ほんとに特性図のようなグラフが表示されていました。

トランジスタの微細な電極に針の先のようなプローブがあてられる仕組みになっていて、それを顕微鏡で見せてくれたのですが、暗くて見えなくてライトをつけてくれました。 すると光が当たったとたんにトレーサー上の特性がぐいっと変わりました。フォトトランジスタほどではないけど、普通のトランジスタも光に反応するんだそうで、とても印象に残っています。

テクトロニクスといえば、あの頃テクトロニクスの測定器用に選別されたアンペレックス6DJ8とかは用途が無くて保守品がよく放出されてました。 今思えば….

uTracer 顛末記

以前から注目していたのですがロナルド・デッカーさんという方がやってるdos4ever.comというサイトがあります。

「DOSよ永遠に」と言う意味のサイト名で世代がわかっちゃいますが、クラシックな機械や回路をいじって楽しんでますよ、という感じです。

内容は英語とフランス語で(自分はフランス語はさっぱりですが)、かなり読み応えがある内容ばかりです。置き時計スタイルの5極スーパーラジオのレストア記事のストーリーなど、なかなかのものです。

アナログ回路だけでなく組み込みマイクロコントローラーもかなり高度に使いこなせて、PICで簡易オシロスコープも作ってしまっています。

さらになんと1970年代からしまいこんでいたナショセミのSC/MPというかなり玄人好みの8ビットMPUで回路を組んでBASICを走らせたり、といった面白い事もやっちゃってます。

ロナルドさんの記事の特徴は、レストアでも製作記事でも回路の動作に立ち入って細かく説明することです。 抵抗の一本まで動作を考えた設計の説明がとても良いのです。

そんなロナルドさんが少し前に真空管のカーブトレーサーを自作しました。回路は真空管に必要な高電圧の生成などのアイディアが満載なのですが、記事で回路や部品一つ一つの役割と動作説明を読んでいくうちにそのアイディアがわかってきます。これがなんとも面白いのです。

このカーブトレーサーはuTracerという名前で最初は基板のみを販売していたのですが、改良が加えられてバージョン3になり、キットとして販売しはじめました。

安くはないのですが、内容からするとかなりお手頃な良心的価格でビジネスというより部品頒布に近いようです。

このカーブトレーサー、とてもおもしろそうなのでここで取り上げるだけでなく、実際に作ってみて、その経過を進行形の連載にしてみようかと思います。 ブログポストにすると時系列に埋もれてしまうので、メニューからもアクセスできるページにしてみます。

uTracer顛末記